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土地の相続による所有権移転登記の登録免許税の免税特別措置

2018.07.20

国土交通省による地積調査に伴う土地所有者の調査の結果、全国の所有者不明の土地の面積は推計で、九州とほぼ同じ面積になるとの報告がなされ、また、農林水産省による農地等の実態調査によると、推計で全国の約2割の農地が相続登記未了とのことです。

 

 このような所有者不明の土地や相続登記未了の土地の登記は、何代も前の所有者の名義のままであることが多いことから、相続による所有権移転登記(以下「相続登記」という。)を推進するため、「相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置」(租税特別措置法第84条の231項)が平成3041日に施行されました。

 

 一見すると相続登記全般の免税措置のように思われますが、あくまで、死亡した相続人の名義にする相続登記を申請する場合にのみ適用があります。

 

 

 例えば、祖父名義の土地について

()祖父 →①()父 →②()母 →③1/3 ()長男・1/3長女・1/3次女

 

このような相続による所有権の移転が発生しているケースでは、次のように適用されます。

()父の名義とする相続登記→免税

()母の名義とする相続登記→免税

()1/3長男・1/3長女・1/3次女の共有名義とする相続登記→1/3 ()長男のみ免税

 

 土地の不動産評価額を仮に3000万円として、具体的な相続登記の登録免許税を計算すると、各相続登記を個別に申請する場合は、12万円(3000万円×0.4%)が①②③3件分で合計36万円必要ですが、今回の特措法が適用されると、①と②の登録免許税合計24万円および③の1/3 ()長男の登録免許税4万円の合計28万円が免税され、③1/3長女・1/3次女の相続登記分の登録免許税8万円を納付すれば足りることになります。

 

 なお、従来からの相続登記の特例として、上記の例のように複数回の相続が発生している場合には、数次相続による相続登記の一括申請ができる場合もありますので、今回の免税措置と合わせて活用することで、さらに費用を抑えることができる場合があります。

 

 また、上記例の土地上に、土地と同様に相続された古民家があり、()母が最後まで一人暮らしをしていて、その後、空き家となっているケースでは、相続人による将来的な売却の際に、居住用財産(空き家)譲渡所得税の3000万円特別控除の適用を受けることができる可能性があります。

 

 

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筆者紹介

酒井 謙次
酒井司法書士事務所 所長

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