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生前に預金口座からまとまったお金を引き出す際は要注意!

2019.07.20

相続税申告をした後、税務署は被相続人の過去の預金を調査します。 

そのため、弊社も相続税申告の依頼を受けた際は預金の調査をさせて頂くのですが、亡くなる直前に大きな出金が確認できることが多々あります。

この出金の使途について、「相続人の生活費?何か購入した?相続人が私的に使用?はたまた現金として自宅の金庫にある!?もしくは、誰かにお金を貸した?贈与した?」など確認していくのですが、相続人が全て説明できるケースは稀です。

以下、2つの例をみてみましょう。

過去の取引履歴を調査したところ、定期的に100万円の出金があり、その合計額は1,000万円に及ぶ。
■ケースA

甲(相続人)が、乙(被相続人)の預貯金を管理しており、甲は乙に無断で出金していた。500万円については乙のせいかつひに充て、300万円については甲の子の教育費に充てたが、残りの200万円については、何に費消したか記憶にない。

■ケースB

甲(相続人)は、乙(被相続人)の身の回りの世話はしていたが、乙の預貯金は乙自身が管理しており、1,000万円の出金については全く知らない。その他の相続人も全く知らないという。なお、自宅の金庫を確認したところ、現金は300万円あった。
 

1.ケースAについて

民法において、「贈与」は、贈与者と受贈者との間に「あげた」「もらった」の意思の合致があってはじめて贈与契約が成立するとされています。したがって、ケースAでは甲は乙に無断で出金しているため、贈与契約は成立しないことになります。

しかし、税務上は、民法における贈与契約がある場合だけでなく、経済的利益を受けた場合にも「みなし贈与」として扱われることがあります。

ケースAの場合に当てはめると、乙の生活費に充てた500万円は、甲が経済的利益を受けたわけではないので、「みなし贈与」とされることはないでしょう。

300万円の教育費及び200万円の使途不明金についてはどうでしょうか。結論からいうと、「みなし贈与」として扱われる可能性が高いです。「教育費や使途不明金もみなし贈与になるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんね。

教育費については、扶養義務者間の生活費や教育費は贈与税が非課税とされているため、孫も直系血族で扶養義務関係にあるため、一見贈与にはあたらないように思います。

しかし、甲の子につき扶養義務を負うのは第一次的には親である甲自身であり、甲が扶養義務を履行できないといった特段の事情がない限り、乙が負担したことにより甲は教育費の拠出を免れたといえます。また、甲は無断で出金しており、乙の教育費としての贈与意思も確認できないため、甲自身が経済的利益を受けたというべきであり、「みなし贈与」とされる可能性が高いと考えられます。

 

次に、使途不明金についてですが、何に費消したか記憶がない以上、甲が経済的利益を受けたとはいえないようにも思います。しかし、甲が預金口座を管理していたのであれば、使途を具体的に明らかにできない限り、甲が費消したことが推認され、経済的利益を受けたとされた判例もあり、これも「みなし贈与」に該当する可能性が高いと考えられます。

なお、相続開始日前3年以内の被相続人からの贈与(みなし贈与を含む)は、相続税の課税価格に加算されることになります。

2.ケースBについて

ケースBは、乙の金銭感覚はしっかりしており、預金口座の管理を全く他人にさせていなかったケースです。相続人に確認しても、全く知らないとのことで、その使途を認識していません。このような場合は、相続人がこれらの出金された現金を取得ないし費消した事実が認められないのであれば、贈与やみなし贈与があったものとする必要はないと考えられます。ただし、現金として自宅の金庫にあった300万円は、当然、手許現金として相続財産になります。

なお、被相続人の生前の出金の使途が不明なケースは多々ありますが、話を聞くと、被相続人に旅行などの趣味があり、それに費消されたことが推認されるなどの事情があることが多いです。そのため、このようなケースにおいても、可能な限り調査し、それを裏付ける資料等の収入に努めることが必要となります。
 

3.まとめ

相続後に相続人が預金口座の出金内容について、きちんと説明ができるように、生前に管理していた被相続人又は相続人が、通帳に内容を記載しておくなど、事前に対策しておくとよいでしょう。

 

筆者紹介

石塚 由紀
税理士法人アイユーコンサルティング 相続・事業承継コンサルティング部 部長
九州北部税理士会
税理士

税理士登録番号:118610
出身:1984年生まれ 千葉県船橋市出身
学歴:専修大学松戸高校、明治大学商学部卒業

略歴
大学院卒業後、国内大手税理士法人の東京本社に入社し、相続税申告、事業承継、企業価値評価、内部統制、上場企業対応等を経験。
入社3年目に同税理士法人の福岡事務所開設にあたり、地方でも東京と同質のコンサルティングを提供したいとの想いから福岡事務所に異動。
福岡事務所ではマネージャーとして、年間20件を超える相続税申告を受注し、相続・事業承継コンサルティングを中心に、
組織再編、M&A、上場会社の申告、移転価格などの案件を担当。その他、金融機関のセミナーや共著出版を行う。

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